渡邉澄晴の写真雑科 2
3. フイルムかデジタルか
「カメラのデジタル化はまだ先の先、当分銀塩は続きますよ!」カメラの技術関係者は異口同音に言っていたのが2000年頃である。その言葉を信じて、ニコンF5を購入したのだが、カメラのデジタル化は猛スピードでやってきた。
『彗星のように現れた新人ランナーが、独走していたベテラン選手を並走する間もなく抜き去った。… カメラ業界を席巻きしているデジタルカメラと、従来の銀塩カメラの関係をマラソンに例えると、こんな表現になるだろうか』。これは、2002年1月31日の日本経済新聞、暮らしの叙景の「ファインダーの向こう」の記事の引用である。
4. 著書・一眼レフと交換レンズ
「いろいろなものが自動化してきた時代、カメラも例外ではなく、ただ押せば写る式の便利なものになった。交換レンズもカラー時代に即応して改良、カメラと精巧な情報の交換を行いながら素晴らしい画像を作ってくれる。しかし、いくら便利なカメラや優秀なレンズでも、すべてが万能ではない。それらの特徴を知り、それをマスターしてこそ・・・」これは1980年にフォトアートから出版し、後に文部省推薦図書になった私の著書、『一眼レフと交換レンズ』の序文である。そして、この本に対する宣伝文句は、「新時代に挑戦する写真入門書!写欲満点!・レンズの向こうに21世紀が見える。」だった。
5. 聞くは一時の恥
その21世紀に入って11年余。写真界の現状はフイルムカメラからデジタルカメラに移行した。つまりテレビと同じようにアナログ時代からデジタル時代になったのである。自称!写真雑学者?としては、その名に恥じないように、「粉骨砕身」、老骨に鞭打ち新時代のデジタルを勉強している昨今である。
ある日、写真教室に招かれ、その日の夜の懇親会で60代の男性から「先生!露出ってなんですか?」と聞かれたことがあった。酒に酔っての冗談ではないことは話からすぐ分かった。カメラを持って間もない彼にしてみれば真面目な質問だったのである。押せば写るの便利なデジタル時代では、露出の原理など知らなくても写真は撮れる。しかし、基礎の知識を持っていれば、必ず作画の手助けになる。