棚井文雄

ニューヨーク物語 4 「和紙×写真」

ニューヨーク物語 4 「和紙×写真」

 昨年の暮れ、知人からNYの書店で Artist Book を期間限定で販売してみないかとの誘いを受けた。ちょうど友人の和紙ソムリエから “フォト和紙” の情報をもらっていたこともあって、「和紙×写真」に対してニューヨーカーがどんな反応するかを知りたいと思い、部数限定の Artist Book を制作した。ヨーロッパで撮影したモノクロネガをデジタルデータ化し、インクジェット対応の和紙に顔料インクで出力した。

 そのArtist Bookは、今年3月に St.Mark’s Bookshop, Printed Matter, Kinokuniya NY の3店舗での取り扱いとなり、St.Mark’s からは、すぐにストックがなくなったとのうれしいニュースが飛び込んで来た。どんな方が買ってくれたのかとても興味深いところであったが、その後コンタクトを取って来てくれたアートコレクターと写真家が所有してくれている事がわかった。そして、和紙と写真との組み合わせについても、「とても良い感じだ」、「写真と合っている」との言葉も頂いた。

 また先頃、前出の和紙ソムリエからNYに連絡が入った。東京で行なわれる “越前和紙「美と芸術の世界展」” の為に、 “越前和紙の里” で撮影をしてもらえないかとの事だった。強行なスケジュール故、数日間ではあったが、人間国宝・無形文化財の方々や、個性的な紙漉き職人たち、加えて海外から紙漉きに来ていた画家とも知り合うことが出来て、とても有意義な “越前和紙の里” 滞在となった。撮影はデジタルで行い、 NYに戻った後、調整したデータを日本へ送り、東京で越前和紙へ出力してもらう ことにした。これらの写真は、髙島屋東京店 “越前和紙「美と芸術の世界展」”(2012年5月16日(水)~21日(月))で展示される。A3ノビサイズ20点余りと、ロール紙プリントの展示も予定されているので、「和紙×写真」に興味のある方には、ぜひご覧になっていただきたい。
 私がメインで使用して来た印画紙が生産中止となり、続いてコダックが倒産。残念なニュースが続くなか、これまでフィルムで撮影した写真を、どのように残していくべきなのか悩まされていたが、今ならまだ入手可能な印画紙はある。また、今回の取り組みによって、日本の伝統工芸である和紙へのプリントも含めて、いくつかの選択肢があることを喜びと捉え直し、今後も写真作品の制作を続けて行きたい。

写真 上:紙漉き職人(人間国宝) 9代目 岩野市兵衛氏
   下:紙漉き職人 西野正洋氏の仕事場

© Fumio Tanai / HJPI320610000334

関連記事

  1. ニューヨーク物語21「クリスマスカードと年賀状」
  2. ニューヨーク物語26 「フリーダ・カーロの遺品」
  3. 渡邉澄晴の写真雑科 1
  4. ニューヨーク物語38「田中徳太郎と大倉舜二と”みそ汁”」
  5. 渡邉澄晴の写真雑科 2
  6. 個性について考える
  7. ニューヨーク物語17「ワシントン広場の夜明け」
  8. 渡邉澄晴の写真雑科 10

アーカイブ

PAGE TOP