棚井文雄

ニューヨーク物語18「無事に届いた、ニッポンの”恋しい”もの」

ニューヨーク物語18 「無事に届いた、ニッポンの”恋しい”もの」

 一昨年の暮れのこと、ポストに不在連絡票が入っていた。「9:30amに配達に来た」とされてはいたが、僕はその時間は部屋にいて、ブザーが鳴ることもなかった。しかし、ニューヨークではこんなことも日常茶飯事。6階建てのアパートといえどもエレベーターがないことも多く、階段で重い荷物を運ぶことが嫌なのか、時間がないのかはわからないが、紙一枚を残してすぐに立ち去ってしまうのだ。再配達希望は全てのエリアで行われる訳ではなく、仮に可能だったとしても時間指定はあってないものと考えた方が良い。僕のアパートからは、郵便局へは歩いても行けるが、民間配達業者の営業所はとても不便な場所にあり、バスを乗り継いだり、タクシーで受け取りに行く羽目になる。
 つい先頃も、日本から発送されたEMS(国際スピード郵便)が届かない。発送者に確認してみると、ストリート名や番地、アパート番号に違いはないが、ZIPコード(郵便番号)を一桁間違えて記入してしまったようなのだ(例えば10011を10012と記入してしまったということ)。ウェブサイトで荷物を追跡してみると、ZIPコードの管轄局までは届いたことになっている。しかし、それぞれの管轄局や本局を訪れてみても、その荷物は1ヶ月以上経過した現在も見つからない。郵便番号が違うだけでこのあり様なのだ。日本なら、少し配達が遅れたとしても確実に届くであろうに…。

 さて、一昨年の僕宛の荷物だが、発送者がわからないまま郵便局に受け取りに行くと、その箱はサイズの割に重く感じられた。伝票を見ると、友人の越前和紙ソムリエ、杉原吉直氏からだ。新しい和紙のテスト品だろうか…、そう思いながら開封すると、何と中から大きな鏡餅が出てきたのだ。
 実は、僕は大のお餅好き、それをニューヨークまで送ってくれたことに甚く感動した。そして、そんな餅好きの舌をこのお餅は唸らせた。いつものように焼き網の上で丁寧に炙り、たっぷりと醤油をつける。すると、いままで味わったことのないフワフワの食感と共に、越前のお米の美味しさが際立ってきたのだ。
 二年続けてこのお餅を堪能させてもらったのだが、今年はもうすでに手元にある。今回は民間業者による配達だったが、アパートに帰ると一階のエントランスに放り投げるようにその箱は置かれていた。まぁ、そんなことはさておき、無事に届いた好物のお餅、いまからお正月までなんて待ち遠し過ぎる。すぐにでも焼いて食べてしまいたい気分だ。しかし、ニッポン人の心ともいえるお餅の贈りもの、「お正月飾り」という伝統を経るまではまた今年も我慢の日々…。2015年のお正月は、どんなお雑煮で迎えようかと思いが膨らむ。
 2014年、お餅以外にもたくさんの「恋しい」モノをニューヨークまで送ってくれた方々がいる。改めて、Thank you so much ^^

2014.12.5

関連記事

  1. ニューヨーク物語19「スリに遭った」
  2. ニューヨーク物語29「駄菓子屋とおもてなし」
  3. ニューヨーク物語 1「New York デジタル写真事情」
  4. エピソードⅢ 虚空巡礼
  5. ニューヨーク物語28「あの空の下で」
  6. ニューヨーク物語32「直球」
  7. 渡邉澄晴の写真雑科 8
  8. ニューヨーク物語38「田中徳太郎と大倉舜二と”みそ汁”」

アーカイブ

PAGE TOP